京都府立大江高等学校の学力向上フロンティア計画「OE-Study」のオフィシャルサイト。

◆ 歴史のひとこま ◆ ~5月8日~

「・・・後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は、結局のところ現在にも盲目になります。・・・」
1985年の5月8日、西ドイツ大統領リヒャルト・フォン・ヴァイッゼッカーは、敗戦40周年にあたって連邦議会で演説を行いました。これがその有名な一節です。

40年前のこの日は、ドイツが文字通り崩壊した日でした。死亡したドイツ人720万人、街は瓦礫の山と化し、家や故郷を失った人々が2500万人、そしてソ連では2000万人、ポーランドでは450万人が殺され、420万から600万ものユダヤ人が殺された(うちアウシュビッツで殺されたのが150万人)ともいわれています。このような悲劇をふまえて、その愚かさや、ドイツ人を含む人類の犯した重大犯罪を二度とくり返してはならないと決意をこめて訴えたのが、この演説でした。
このヴァイッゼッカー演説は、ドイツ国内だけでなく世界各地で大きな反響を呼び起こし、人々に深い感動を与えました。その理由は、彼が国家元首という立場にありながら、自国がかつて犯した罪責を1つ1つ具体的にあげて反省し、情熱こめて率直に語りかけたその姿に、人々が共感を覚えたからでしょう。

 「誠実にまさる知恵なし」ドイツの詩人シラーの言葉です。またイギリスの思想家カーライルは、『英雄と英雄崇拝』の中で次のように言っています。「失敗の最たるものは、何ひとつ失敗を自覚しないことである」
同じ人類の失敗を自分のものとして自覚し、それを認めるヴァイッゼッカーの誠実な言葉からは、人類の未来を考え、同じ失敗をくり返さないために歴史から学ぼうとする姿勢が読み取れます。そして「過去に目を閉ざす者は、結局のところ現在にも盲目になる」という言葉には、彼の考える「歴史を学ぶ意味」がこめられています。

過ちを過ちとして認めることから人間の進歩が始まります。「誠実さ」と「失敗を自覚し、そこから学ぶ姿勢」を大切に、学校生活を送ってください。


京都府立大江高等学校 
教  諭 山 田 義 治