京都府立大江高等学校の学力向上フロンティア計画「OE-Study」のオフィシャルサイト。

◆ 歴史のひとこま ◆ ~9月27日~

戦後30年以上が経った1977年9月27日、厚木基地を発進した米軍のファントム偵察機が火災を起こし、午後1時20分ごろ横浜市緑区(現青葉区)に墜落しました。一帯には機体と大量のジェット燃料が飛散し、付近の公園と民家は一瞬にして火の海となりました。事件発生と同時に自衛隊は救難ヘリコプターを出動させ、10分後には現地の上空に到着しました。しかし、救難ヘリは大やけどを負って救助を求めている被災者を助けることなく、パラシュートで脱出した無傷の米軍パイロット2人を乗せて厚木基地に帰ってしまいました。2人の幼児を含む9人の重軽傷者は、付近で宅地造成の仕事をしていた人たちによって救出されました。病院に収容された林裕一郎君(当時3歳)と弟の康弘君(当時1歳)は、全身の大やけどで間もなく幼い命を閉じました。母親の和枝さん(当時26歳)は、全身の8割におよぶやけどを負い、大勢の人の皮膚の提供を受けて皮膚の移植手術を行いましたが、1982年1月に亡くなりました。
この出来事は、「パパ、ママ、バイバイ」という絵本や映画にもなったので、知っている人もいると思います。この出来事を知って「かわいそう」と素直に思ってほしい。そして、高校生であればその先まで考えてほしい。「なぜ救難ヘリは米軍パイロットだけを助けたのだろう」「なぜ米軍の偵察機が横浜に墜落したのだろう」「そもそも、なぜ厚木に米軍の基地があるのだろう」というふうに。
結局解決にはいたりませんでしたが、鳩山首相が普天間基地問題に取り組んだ時、似たような疑問を持ったのではないでしょうか。「沖縄になぜ米軍基地があるのだろう」「基地周辺で犯罪を犯した米軍兵士が、なぜ警察に逮捕されないのだろう」「そもそも日本に米軍基地が必要なのだろうか」
 「パパ、ママ、バイバイ」を見て、単に「かわいそう」だけで終わらせてはいけません。その奥にある真実の部分を、もっと深く知ろうとする姿勢が大切なのです。その姿勢を社会に出るまでに身につけて欲しい。その姿勢を、今、身につけなければ、自分の望んでいない方向に社会が進んでいても気付かないでしょう。知らぬ間に、自分が望んでいない社会で生きていかなければならない状況になったり、自分が加害者になっていることもありえます。「周りに合わせていればよい、自分は知る必要がない」という考え方は危険なのです。どうか「もっと深く、真実を知ろう」という姿勢を身につけてください。

京都府立大江高等学校 
教  諭 山 田 義 治