京都府立大江高等学校の学力向上フロンティア計画「OE-Study」のオフィシャルサイト。

韓国世情

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韓国へ出発する日、関西国際空港で撮影した写真です。「ベビーベッドがあります」との案内が、女性トイレだけでなく男性トイレにもあることに感心し、思わず撮りました。私が3ヶ月間の育児休業をとった期間、一番不便に感じたのが、外出の時にベビーベッドのついた男性用トイレがないことだったからです。この不便さは韓国でも同様だと思います。韓国でも、ベビーベッドがついた男性用トイレはほとんどありませんでした。(唯一発見したのは、ロッテマートのトイレでした。)

施設・設備面の不自由さだけでなく、制度はあるが実際にはその権利を自由に行使することができない(できる環境にない)点も、日韓の共通点ではないでしょうか。周囲の方々の理解・協力のおかげで、私は幸いにも育休をとることができましたが、日本では男性が長期の育休を取得することは非常に難しいと思います。韓国で高等学校を訪問した際、子どもが生まれたばかりの男性の先生に、韓国の育児制度について尋ねたところ、「制度としてはあるが、現実問題としては難しい」との答えでした。

資料1に示すように、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均)は、2009年のデータでは、日本は1.37、韓国は1.15で、共に少子化が大きな問題となっています。資料2は、学校教育費の対GDP比を公的負担と私的負担の内訳を含めグラフにしたものです。韓国は私的負担の高さが2.9%と目立っています。ただし、これには塾、家庭教師などの学校教育以外の費用は含まれていないので、教育費の総てではありません。韓国の場合、激しい受験競争に対応するため、塾や家庭教師の私的負担がこれ以上に大きく、その家計負担の大きさのために、出生率が低くなっているようです。

韓国では、1980年には901だった幼稚園の数が、2008年には8344と大きく増加しました。また、1999 年からは、低所得の家庭の子どもに対する教育補助金支給、2005年には3~4歳の子どもに対する補助金、2人以上の子どもがいる家庭に教育補助金を援助する制度が実施されました。少子化に歯止めをかけるべく、様々な方策をとっているのが日韓両国の共通点。その政策が実質をともなったものになっていないのも日韓両国の共通点でしょう。

少子化対策として、ハード面(形として見えるもの:施設や設備)を整備することは当然必要です。そしてそれ以上に必要なのは、ソフト面(形には表れないもの:制度や周囲の理解や協力)でしょう。日韓両国ともに、ハード面がようやく整備され始めたところで、ソフト面の整備はまだまだです。両国で、両面の整備がされることを望むばかりです。正しい日韓関係を築いていく次の世代を育てるためにも。

参考文献・資料
海外文化弘報院「韓国のすべて」2009
本川裕「社会実情データ図録」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html

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京都府立大江高等学校
教 諭 山田 義治

2010年9月27日から10月10日までの2週間、「日本教育者韓国学ワークショップ」に参加しました。これは、2002年日韓ワールドカップ共同開催を記念して、韓国際交流財団と日本国際交流基金が2000 年から始めた事業で、日韓両国の相互理解増進を目的としたものです。今回は、全国の中学校、高等学校から、私を含む23名の教員が参加しました。このワークショップを通して学んだこと、気付いたことを、これから何度かに分けて紹介します。

関西国際空港から韓国の金浦空港までは、1時間半のフライトです。ちなみに、丹後の家を出発してから関西国際空港までは、鉄道で約4時間かりました。都市部以外の国内移動にかる時間と比較することで、韓国の近さが実感としてよくわかると思います。

近い国であるため、古来より、朝鮮半島から多くの渡来人が日本にやってきました。当時の朝鮮半島は日本から見れば文化的先進国。先進技術を持った彼らは、日本に多くの文物を伝えました。その結果、日韓の間には多くのつながり、類似点や共通点があります。その最も身近な例は、言葉でしょう。

平城京があった場所は現在の「奈良」ですが、この「奈良」という地名は、「クニ」を意味する韓国語「ナラ」がルーツとされています。「村」という言葉も、新羅時代の韓国語「ムラ」に由来します。

また、日本語で「端(ハナ)から」「初っ端(パナ)」「寝入り端(バナ)」「出端(バナ)をくじく」と言いますが、この「ハナ」「パナ」「バナ」は、「1つ」を意味する韓国語「ハナ」が語源です。韓国では「1つ、2つ、3つ、4つ」を「ハナ、トゥル、セッ、ネ」と数えますが、この「セッ、ネ」が日本語の「せ~の」になったとする説もあります。この他にも、「釜」や「窯」は「カマ」、「どんぶり」は「タンバル」、「鍋」は「ナムビ」、「木綿」は「モンミョン」に由来します。お祭りで御輿を担ぐ時のかけ声「わっしょい」も「来た」を意味する韓国語「ワッソ」が語源とする説があります。おそらく、「神様が乗った輿が来たぞ」という意味で使ったのでしょう。

こうしてみると、日常の言葉に溶け込んでいる韓国語の多さに気付くでしょう。それら韓国語由来の言葉は、朝鮮半島からの渡来人が当時の先進技術や文化を日本に伝えたという、歴史的事実を思い起こさせてくれます。また水車やサツマイモのように、逆に日本から韓国に渡った技術、文化もありました。純粋な「日本人」や「日本文化」という表現が、いかにおかしいものであるかがわかるでしょう。

近いが故に、文化的には兄弟のような関係で発展してきた日本と韓国。歴史的にみると、友好的、建設的な関係とは言えない時代もありましたし、それが尾を引いている部分が現在でもあるでしょう。それを乗り越え、新しい日韓関係を築いていくために、両国の類似点や共通点に注目し、本来の日韓関係に気付く。今後のよりよい日韓関係を築いていくヒントが、こにあるのではないかと思います。

参考文献 コリアンワークス『知れば知るほど理解が深まる「日本人と韓国人」なるほど事典』2002年

京都府立大江高等学校
教 諭 山田義治